INTERVIEW

ホームインタビュー記事高井靴店 代表 高井貴亘

夢を叶える行動力 情熱と思いやりで靴を作る

高井靴店
代表 高井貴亘
update: 2022.01.05

ロンドンのJASON AMSBURY氏に弟子入りをし靴職人となった高井貴亘さん。
夢を決して諦めなかった高井さんに靴職人として独立するまでのお話を伺いました。

夢を叶える行動力 単独でロンドンへ

幼少期からクラブチームに所属するほどの野球好き。ただ実は、プレイするよりもグローブに興味を持っていた少し変わった少年だった。親から初めて買ってもらった新品のミズノのグローブ。当時はとても高価なものだった。新品のグローブは硬く、ボールをキャッチするのも難しい。手入れをしたり使っていくうちに味が出て、使い易くなっていくグローブ。「新品時は完成品なのに未完成、使っていくうちに完成していく」という事にとても魅力を持った。
大学を卒業後、企業に就職を考えたがしっくり来ない。そこで昔から好きだったグローブを作る職人になりたいと思い、野球用具メーカーやグローブ職人に電話をかけまくった。しかし、募集も無いばかりか、1人のグローブ職人からグローブは需要が少なくなっているので諦めろと最後通告を受ける。
失意の中、たまたま書店で見つけた靴専門誌「LAST」の記事の特集を見る。見た瞬間、これだ!と思った。革靴もグローブ同様、「新品時は完成品なのに未完成品、使っていくうちに完成していく」というものだった。居ても立っても居られず、その雑誌を握りしめイギリス・ロンドンのJASON AMSBURY 氏の下へ。今となれば無鉄砲だったが、弟子にしてもらいたいという一心で行動していた。


shoe making is gentle craft: 師から教わった大切な想い

飛び込みで何も分からずJASON AMSBURY氏の元へ。英語も殆ど喋れない状態でJASON氏と会話して想いを伝えた。すぐに弟子入りはできなかったものの、数ヶ月後JASON氏から突然連絡が来る。販売会で来日した際についに弟子入りを許してもらえるとのことだった。感極まる喜びの中で、イギリスに訪問する為に日本で必死で働きお金を貯めた。渡英後、まずは靴に使う糸作りを見よう見まねで習得していった。ビザの関係で途中で帰国せざるを得ない状況になるまで、JASON氏や兄弟子たちの動きを見て盗んで、学んでいった数年間だった。

JASON氏から教えていただいた事は数多くあるが、最も印象的に残っているのは「shoe making is gentle craft」という事。これは、靴作りの工程は全てが思いやりであるということ。どんな小さな作業工程でも、丁寧に真心込めてやることが、靴作りには欠かせないものだという事を常に教えてくれた。
この言葉は高井氏にとっての大きな道しるべになっており、現在の高井靴店のロゴにもこの言葉を入れている。技術だけではない、靴作り職人としてのマインドやスタンスまで徹底的に吸収して帰国した。


コロナ禍を機に独立 時代の変化に合わせながら靴と向き合う日々

帰国した後、イギリス時代に師匠の靴店に出入りしていた社長からお誘いを受け、大阪で靴店の店長として働くことになった。それまでは靴職人としての仕事を行っていたが、誘ってくれた新しいお店では接客も求められる仕事。元々話すことが得意ではなかったが、新しいチャレンジだと思い、お客様にはとにかく積極的にコミュニケーションをとっていった。イギリスで学んだ知識と経験を話のタネにして、次第にお客様とコミュニケーションをうまく出来てきた。
そんな頃、コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされる。休業中のあり余った時間の中で、ロンドンの日々を思い出す毎日。次第にJASON氏のように独立したいという気持ちが沸々と湧いてきた。経営は自ら動き、自分で責任を取るということ。いつか自分もそうありたいと考え、ついに独立を決意する。
たくさんの仲間に助けられ、夢が叶い自分のお店を持つことができた。お店は日がよく当たる場所。イギリスの工房と似ていて作業がしやすい空間で即決した。
今はここで毎日忙しく靴と向き合う日々。時代の変化やお客様のニーズに合わせて自らも変化し新しいことにも挑戦したいという想いは変わらない。そしていつでも師匠に教えてもらったgentle mindを忘れないよう日々靴を作り続けている。


事業内容:オーダーメイド靴の製造・販売・修理
設立:2021年2月
従業員数:1名
HP:https://nobbysgentlecraft.com/

インタビュアー

境野香菜